健康ニュース 平成12年6月10日送付 発行部数 530
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ お願い
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<本文>
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▼【TOPニュース】
・第42回衆議院選挙、6月13日公示、25日投票日!
 1996年の前回衆議院選挙以来3年8ヶ月ぶりの選挙で、自公保連立政権の国民審判を受けることになります。
 心肺蘇生法は、「お互いの命を守る社会づくり」を目指した個人の社会参加であり、衆議院選挙の投票は国民の個人の一票の意思表示により政治は成り立つ間接性民主主義の政治参加です。今こそ、世間人ではなく、社会人としての個の主張を明確に示す社会人としての責任を果たすときです。
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▼【連載特集】
「あなたは愛する人を救えますか」その11
-ラジオ体操は,お互いの命を支える地域づくり-
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史
 仮設住宅には,震災で家族を失い,職を失い,生きる力も失いかけている独居住人が大勢住んでいた.彼らは“閉じこもり症候群”とも言われ,まわりの人々とのつき合いを拒み,いろんな呼びかけにも応じない,別の言い方をすれば社会的関係を拒絶した仮設住宅の住人である.孤独死は,仮設住宅から生まれた言葉で,以前にも1人住まいの独居住人が亡くなってから発見されることがあった.しかし,仮設
住宅は皆,震災で死ぬ思いをし,一度は生きている喜びを感じた同じ思いの被災者が住んでいる所である.だからこそ,避難所の体育館のフロアの上で何10世帯の家族が助け合いながら生活できたのである.ゆえに,仮設住宅で人知れず息を引き取り,亡くなったことも周りの人が気付かない孤独死があることが問題なのである.
 私は13年前から兵庫県において心肺蘇生法の啓蒙普及活動を行っているが,目の前で人が倒れても,声もかけず,周りから見ているだけの社会に対する啓蒙と思っている.「あなたは愛する人を救えますか」のアピールは,単に突然死患者の救命率を上げるためだけでなく,「目の前で突然,人が倒れたならば,あなたは何が出来ますか」の問いかけであった.お互いが干渉しない社会というよりもむしろ無関
心社会といった方がよい現状の中で,家族愛を通してお互いの命を守ることの大切さを意識させることが最後の,最良の手段と考えたからであった.たとえ,目の前で突然,倒れた人が,見知らぬ人であっても,「どうした,大丈夫か,救急車を呼んで」と声をかけ,大声で叫べるひとが兵庫県に100万人いれば,兵庫県は素晴らしい県になると信じているからである.また,私は1人で死んで行く人間の寂しさを知
っているからである.
 平成7年1月17日の阪神・淡路大震災で自らが被災し,この時はじめて人間社会の素晴らしさを実感し,もう一度人間を信じてみようと思い直した.災害現場では周辺住民が一致団結して倒壊家屋の中から多くの人々を救出した光景がいたるところで見られた.6500人を越える死者を出した大震災の場で,「お互いの命を守る」という人間共同社会の原則が未だ息づいていたことに深く感動を覚えた.お互いの命を守りあい,お互いに助け合うことが人間愛であり,また日頃からの近所付き合い,毎日の挨拶が隣人愛であることも震災の実体験の中で感じたことであった.
  ブラジルのサントスの浜辺で,日系人が始めたNHKのラジオ体操が非日系ブラジル人の間でも流行しているニュースを聞いた.サンパウロ市でも毎朝,いたるところ行われているとのことであった.ラジオ体操の歴史は古く,大正時代から国民体操として始まり,現在にまで続いている.現在の仮設住宅には高齢者が多く,ラジオ体操に昔なつかしさを感じる人が多い.「生きること」とは単に息をして生かされていることでなく,自分の意志で身体を動かす誰にでも見える行為がなければならない.たとえ病気があろうとも,身体に不自由があろうとも,身体を動かす努力が,生きている証であり,元気を取り戻す第一歩なのである.
 ある仮設住宅のふれあいセンターで,「私は,この仮設から孤独死だけは出さないように努力している.最後の一人になるまで頑張るつもりだ」と思いを語ってくれた自治会長が,「実は今日,恒久住宅に移った元の住人がお菓子を持って来て,この仮設に住んでいた時の方が良かったと言ってくれました」と笑みを浮かべて言った時,私は「会長,何よりも一番報われる言葉ですね」と言葉を返しながら,お互いに涙を必死にこらえようとしている二人の姿がそこにあった.
 仮設住宅での孤独死対策として,各棟ごとに棟長を決め,毎日,声をかけて様子がおかしければすぐに警察に連絡する体制をとっていると答えた所がある.責任義務としての安否確認では,閉じ込もり住人に生きる力を与えることにはならない.閉ざされた心を開かせるコミュニケーションとは,個人対個人ではなく,個人対複数あるいは多数の間でのふれあいの働きかけが必要である.これには,住民全体が一体となって閉じ込もり住人のまず一人を“お隣さん”に引き入れる同じ住人自身による辛抱強い取り組みが残された最後の手段と思う.恒久住宅にすべての仮説住民が移った現在でも、ラジオ体操が心のケアの新たな呼びかけになること願っている.
続く
 バックナンバーにつきましてはセンターホームページ資料ボックス
http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。
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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】
・玄米食は最高の健康食!
 全粒穀物の代表選手が玄米です。以前は胚芽に含まれるビタミンB群、Eの効能が強調されていましたが、米ぬかに含まれるフェルラ酸、フィチン酸、イノシトールこそが、正に生活習慣病予防作用があり、玄米に関する国際学会が開催されるほどです。抗癌作用、抗酸化作用(活性酸素に対する作用)のみならず血小板の凝集を抑える作用が今後、増加する傾向にある心筋梗塞、脳梗塞の血栓予防になると注目
されています。世界の生活習慣病予防学者が絶賛する健康食が日本にあったのです。
 炊飯器には玄米炊のセットボタンもあり簡単に玄米を炊くことができます。近所の米屋さんで低農薬あるいは無農薬の玄米、銘柄の指定もできます。
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▼【センターの話題】
・全国に先駆けて減量を支援する「肥満メーリングリスト」開設!
 減量の意欲の維持には支援が必要です。医学面は兵庫県立健康センター所長 河村剛史(運動循環器)、神戸大学医学部第2内科 乾明夫(内臓代謝)が担当し、運動指導員、心理カウンセラー、看護婦、管理栄養士のスタッフが専門の立場でご質問にお答えし、皆様の減量を支援させていただきます。
 お問い合わせは松葉(matsuba@hyogohsc.or.jp)まで
・「介護者のための健康づくり講座」 第2期受講者募集のご案内
 開講日程 7/15、7/29、8/19、9/9(すべて土曜日)
 開講時間 14:00?16:00
 講座内容
    講話「介護者の健康とストレス」、実習「介護者のための食事」、実技「心とからだのリフレッシュ」他
 受講料金 6,000円
 お問い合わせは大前(oomae@hyogohsc.or.jp)まで
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▼【兵庫県内の話題】
・淡路花博覧会に関係するユニークな風保険契約!
 淡路花博覧会は4月開幕以来2ヶ月が経過し、はや入場者数200万人を突破しました。この花博ちょっと変わった保険に入っていることをご存知でしょうか。6月から9月までの4ヶ月間に風速15m以上の風が吹いた場合に樹木被害対策に1億円の保険金が支払われる契約を安田火災と結んでいるそうです。ちなみに過去において6月から9月までに風速15mを超えた日は、0.7日で、今年の6月から9月までの4ヶ月間の保険料は2000万円とのことでした。
 阪神淡路大震災を経験した兵庫県ならではの危機管理対策です。
・兵庫県西播磨のSPring-8(高輝度放射光施設)から大きな成果!
 遂に「Nature」来週号の表紙を飾ります。ぜひご覧下さい。
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▼【兵庫県外の話題】
・ヒト第21染色体のDNA塩基配列を解読!
 榊佳之教授(理化学研究所ゲノム科学総合研究センター)をリーダとする日独を中心とする63人の科学者が第21染色体の地図作成・配列解読を5月18日発刊の「Nature」に発表しました。この染色体の決定された3380万塩基対の中で、活性をもつ遺伝子はわずか225個らしいということです。また、解読された2本の染色体の平均遺伝子密度から推測すると、ヒトの全遺伝子数は、これまで考えられていた7万
?14万個よりも少なく、4万個に近いかもしれないということです。第21染色体には、ダウン症、アルツハイマー病などに関係する遺伝子があり、今後の病態解明と治療法の開発に大いに期待されます。
・WHO報告書「世界の平均健康寿命」!
 日本人の平均寿命は80.9歳で世界一であることはよく知られていますが、平均寿命から生涯にわたる病悩期間の合計を引いた平均健康寿命においても74.5歳で世界一です。しかし、世界一ばかりを誇ってはいられません。つまり、このことは単純に80.9歳から74.5歳を引いた平均6.4年間は寝たきりを初めとする身体的行動障害の状態の生活をおくっていることを意味しています。
 ちなみに世界の短命国は、内戦やエイズが猛威を振るっているアフリカ諸国で、中でもシェラレオネの平均健康余命は25.9歳(平均寿命34.3歳)です。アフリカは遺伝子研究から人類の発祥の起源といわれていますが、ネアンデールタール人の平均寿命は20歳前後といわれており、現在のアフリカは150万年まえの原始時代に戻っているといっても過言ではありません。
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▼【お願い】
 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人477件、団体53件の合計530件の方々にご送付させていただきました。
 誠にお手数ですが貴メールアドレスへのメールマガジンの送付停止につきましては、下記の当センターホームページより削除依頼いただきますようお願い申し上げます。
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 ご意見、ご要望、記事等のご投稿につきましては、メール等でご送付いただければ幸せです。また、健康づくりに関するディスカッション、質問解決の場としてはメーリングリストを開設いたしております。併せてご利用下さい。
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