健康ニュース 2001年3月11日送付 発行部数 726
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・健康スポーツ関連施設連絡協議会発足
 3月8日、兵庫県医師会長が代表発起人となって呼びかけた民間の健康増進施設やフィットネスクラブによる「健康スポーツ関連施設連絡協議会」(以下、連絡協議会」)が、県下30施設(42名)の参加で発足会を開催しました。橋本章男兵庫県医師会長から「この連絡協議会が発足できたことは大変意義深いことである。施設や地域の課題と問題点を集約して、県医師会として可能な限りバックアップしていく。」と挨拶を受けた後、初代会長に河村剛史兵庫県立健康センター所長を選出し、スタートしました。
? 「連絡協議会」設立の主目的は、施設利用者の健康管理や安全管理の充実です。具体的には、指導プログラムや施設の運営方法などについて、研修や情報交換等を重ね利用者のサービス向上を図ることは勿論、県下で640人が認定を受けている「健康スポーツ医」との契約に基づく健康管理や安全管理を推進していくことです。また、これらのネットワークづくりや日常的な指導・相談が容易にできる環境づくりも主な活動内容として挙げています。
? さらに、将来的には、官民一体となった兵庫県下の健康づくりネットワークを組織して、兵庫県の郡市区医師会と健康スポーツ施設だけでなく、学校並びに地域のスポーツクラブとの連携も図り、県民の「安全かつ効果的な健康づくり」に寄与することを目的としています。
? 河村会長は「この連絡協議会が、全国に先駆けて発足できたことは大変意義深いことである。施設利用者の健康管理や安全管理の充実を目指し、個人の資質を向上させるための研修や情報交換などを積み重ねていくことは、企業や施設資本の蓄積とイメージアップに大きく影響してくるとともに、国家的財政戦略としても大きく貢献できることである。」と強調しました。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」?勇気の死
 兵庫県立健康センター 所長
  河村剛史
 平成13年1月26日の夜、東京都新宿区のJR新大久保駅で、酒に酔った見ず知らずの男性がホームから転落したのを見て、とっさに助けようとした2人が電車にはねられ3人とも死亡した事故が発生した。男性を助けようとして巻き添えとなった2人は、カメラマンの関根史郎さん(47歳)と韓国人の日本語学校生の李秀賢(イ・スヒョン)さん(26歳)であった。
 人を助けようとして死亡した2人の死は、"勇気の死"、"善意の死"として連日、マスコミに報道された。特に、韓国留学生が他国の日本人を助けようと命を落とした行為は日本人に大きな感動を与え、日韓の架け橋になることを夢みていた李さんを日韓友好のシンボルとして報道された。李さんが開設していたホームページには、2万通以上のメールが寄せられ、李さんが通っていた日本語学校にも勇気をほめたたえる多数の手紙が届いた。告別式には森首相はじめとする政府関係者が弔問に訪れ、国会でも取り上げられた。
 20世紀最後の年の2000年は、愛知県の主婦刺殺、西鉄高速バス乗っ取り、岡山県の金属バット殴打、暮れには兵庫県三津町で起こったタクシー運転手殺人事件と続き、「17歳の凶行」が社会に深刻な衝撃を広げた年であった。ようやく年が暮れると思っていた27日には東京世田谷区の一家4人の惨殺事件が起こった。2001年の新年を向かえ、今度は成人式で見られた一部の若者の目にあまる傍若無人ぶりに次世代を担う若者に国民が失望感を抱いていた時期にこの事件が起こった。
 自己中心主義が蔓延している日本において、人を助けるために死んだ自己犠牲の行為は日本人の多くが忘れかけていた人間愛のすばらしさを呼び起こし、こうした場面に遭遇した時に「自分ならどうする」という自問自答の機会を与えてくれた。この事件後の一週間に、プラットホームに落ちた人を助けた救助の報道が続いたのも不思議ではない。
 関根さんと李さんとはその人物像にいくつかの共通点があった。2人とも責任感、正義感がつよく、人が困っていたら見捨てておけないような人であった。関根さんの趣味は、スカイダイビング、登山、スキー、マウンテンバイクなどのアウトドアスポーツで、自然の風景を撮影するため、日本アルプスなどにもよく出かけていた。李さんも富士山をマウンテンバイクで登ったりするアウトドアスポーツ派で、2人とも自然愛好家であった。自然愛好家には、地球生命体の一つとしておのれの命を感じ、自然の中ではお互いの命を守りあう心が生まれている。自然の中では、見知らぬ同士でも挨拶をする自然の雰囲気がある。2人の行為は、他人の生命の危機に対するとっさの反射的な行動であり、まさに人の命の尊さを知っている「福祉の心」を身に付けた人間の本能的な行動であった。
 もし、この事件が山で起こっておれば、より多くの人々が一致団結して救助にあたっていたと思う。残念ながら、都会では2人の勇気ある行動に対して、プラットホームに入ってくる電車を止めに走っていく人も、2人に危険が迫っていることを知らせる人も少なかったのではないだろうか。救助の手を差し伸べて、プラットホームに引き上げようとしなかった多くの傍観者の光景が見えてくるのは残念です。
 心肺蘇生法は人間愛に基づいた行為であるからこそ突然、目の前で人が倒れた時、「大丈夫ですか」と声をかける事が選択枝のない絶対的行為なのである。目の前の命を救うのは人間の当然の行為という前提に立っているからである。しかし、救命救助は1人の力により救えるものでなく、周辺の人々の一致した協力があってこそ可能なのである。

 続く

バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・赤ワインの虚血性心疾患の予防効果は未証明
 フランスの虚血性心疾患による死亡率は、同じ肉食文化を持っているアメリカと比べて約2分の1であることから、“French paradox”と言われ、赤ワインが虚血性心疾患を予防するという健康神話が生まれ、日本でも赤ワインを飲む愛好家が増加しました。このほど循環器疾患の専門誌「Circulation」にアメリカ心臓協会(AHA)の公式見解が発表されました。赤ワインに含まれるポリフェノールは、実験的には血中の動脈硬化を防止する善玉コレステロール(HDL)を増加させ、リポ蛋白の酸化を防止する抗酸化作用があることは証明されていますが、赤ワインを飲めば虚血性心疾患を予防するという前向き大規模調査はなされていません。フランスで虚血性心疾患が少ないのは、ワイン飲酒者が野菜、果物、魚の摂取が多いなどの理由も考えられ、逆にアルコール摂取が多くなると高血圧や脳卒中の危険性を高めます。虚血性心疾患の予防目的のために赤ワインを飲むことを進めるべきではないと忠告しております。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・4月15日(日)午後13時00分から「脊椎ストレッチウォーキングin住吉川」開催
 神戸21世紀・復興記念事業の一環として、兵庫県立健康センター、東灘区および東灘区医師会が主催いたします。河村兵庫県立健康センター所長の講話「背筋を伸ばして、今のあなたにもう1,000歩」があります。参加費は無料です。申し込みは、兵庫県立健康センターまでメール(mail@hyogohsc.or.jp)でお申し込みください。

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▼【兵庫県内の話題】

・県立粒子線治療センター(仮称)が今春、播磨科学公園都市に完成
 すでに大型放射光施設(Spring8)が稼動している兵庫県新宮町の播磨科学公園都市に究極の放射線治療と言われている粒子線を使ったがん治療センターが完成します。肺がんや食道がんなどの深部がんに有効な「陽子線」、腺がん、肉腫、骨腫瘍などに有効な「炭素線」の照射装置を備えています。兵庫県における対がん戦略の目玉事業で、総事業費は280億円です。

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▼【兵庫県外の話題】

・「屋外のたばこ自動販売機撤去条例」の波紋
 世界保健機構(WHO)は、たばこによる健康被害防止を目指す「タバコ規制枠組み条約」の議長草案を1月22日に発表しました。この中で、18歳未満の青少年が利用できそうな場所へのたばこ自動販売機の設置禁止を盛り込んでいます。この条約は2003年の採択を目指したものですが、日本ですでに条例案として議会に提出した自治体があります。青森県深浦町で、昨年9月に「健康長寿のまち」を宣言し、その取り組みの一環です。ヘビースモーカであった平沢敬義町長が、自治体としての率先垂範を示した条例として、今後の他の自治体へ波紋が広がることを期待しています。

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