健康ニュース 2002年2月5日送付 発行部数 1098件
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・兵庫県立健康センター20周年記念行事の開催

 昭和57年にスタートした兵庫県立健康センターはお陰様にて、この春20周年を迎えることができます。5月19日(日)に同時に誕生した同じ敷地内にあるコープこうべ生活文化センターと一緒に記念行事を開催する予定にしております。この間、施設の使命も健康増進から生活習慣病予防に移り、来るべき超高齢社会の到来に向けて、「長寿の道は、自立自尊」、「健康は自らを知る、生きる喜び」を活動理念にすえて、今後の展開を図りたいと思っております。
 記念行事には、兵庫県立健康センターの支援・愛好者が集い、生きている喜びを感じるすばらしい会にしたいと考えております。この機会に一度、兵庫県立健康センターにお越しいただけることを願っています。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」−「勇気の平等」を教えた心肺蘇生法
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

 人間には平等に与えられたものがある。それは「命と勇気」である。特に、中学生を対象とした講演会「命は誰のもの」では最も伝えたいメッセージである。この世の中で一番すばらしい人間とは、目の前で友達が倒れたら、友達の命を救うために、大声で助けを呼べる勇気をもっている人である。助けてほしいと声も出せない友達の代わりに大声で叫び、必死で助けようとする姿の中に友達の命の危機が周囲に伝わり、初めて救助の手が差し伸べられるのである。試験をすれば、1番から100番まで順位がつく。かけっこをすれば一番から順位がつく。人間の能力に差があるのは当然である。求められる人間とは、だれの心の中にも平等にある勇気を常に出せる人である。目の前で倒れた人の命を救うために大声で助けを呼べる人はすばらしい人である。これからの世の中は、こうした人達が支える社会であってほしいと次世代に期待を込めて講演をしている。
 兵庫県では、毎年、県職員新規採用者、県教育委員会新規採用教職員は全員、オリエンテーション研修で私が心肺蘇生法を教えている。この中で車椅子の女性職員の思い出が印象深く残っている。彼女は明朗、活発な女性で、車椅子を自由に操作していた。心肺蘇生法の講習にも当然参加していた。訓練人形を囲んだグループでは、車椅子を降りて、畳の上に座って講習を受けた。下半身麻痺があっても、肘をついて身体を起す工夫を加えれば、問題なくマニュアル通りの手技を行うことができた。
 講習会の最後には、全員が一体の訓練人形の回りに大円陣を組み、1人づつ前に出て心肺蘇生法をやってもらうことにしている。これは、目の前で倒れた人を助けに飛び出す勇気を試す絶好の場であり、毎年、どの職員が最初に出てくるかが楽しみでもあった。「さあ、職員が目の前で倒れた。最初に飛び出すのは誰か」と大声で叫んだ瞬間、なんと彼女が畳の上を這いながら必死に中央の人形に向かっているではないか。飛び出そうとしていた他の職員も思わず立ち止まり、彼女の行動を見守った。そして、全員の注目するなかで見事に心肺蘇生法をやり遂げ、「合格!」と叫んだ私の声に大きな拍手が沸き起こった。手を何度も上げガッツポーズをし、満顔の笑顔で元の位置に戻って行った。
 新任研修会終了後の感想文で、彼女は社会の一員としてお互いの命を守る責任を果たせた喜びと身体障害者としてでなく一人の人間としてまったく隔てなく普通に接した私の対応に対しても非常にうれしかったという内容が書かれていた。「命の危機の前では身体障害は理由にならない、人間として何が出来るか」を職員の前で見事に見せてくれた彼女の姿は、ともすれば身体障害者として特別視する周囲の人々に対してまさに社会の一員として対等な人間宣言であった。反省すべきはわれわれであった。
 人間の平等には、個人個人の命のごとく平等に与えられたものを権利として守られていることだけでなく、他人の命に対して勇気をもって守る義務が求められている。人間社会における誇りをもった対等な人間とは、社会から恩恵を求める権利のみを主張するのではなく、いざという時に勇気を持って他人の命を救う行為を示せることが「お互いの命を守る社会づくり」に参加している対等な人間、パートナー社会人の一員としての必要条件である。
「あなたは愛する人を救えますか」を訴えて活動している私の心肺蘇生法普及運動は、「他人の命を守ることが、自分の命を守ることになる」という誰にでも理解できる最後の、また最良の啓発手段と考えたからである。これは「基本的人権は人間に平等に与えられた権利であるが、これを守る義務も課せられている」ことを学ぶまさに民主主義の啓発運動なのである。

 続く
バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・スギ・ヒノキ花粉症の予防対策の時期になりました。

 2月からスギ花粉、3月からヒノキ花粉の飛散が始まります。花粉症対策の第一は、マスクによるアレルゲンの侵入を防止、第二に症状のない事前の予防薬としての抗アレルギー剤服用が大切です。特に初期療法が重要です。花粉症患者の増加の背景には、戦後のスギの植林(国土の25%)にあり、1964年に最初の報告が見られ、それ以後、急激に増加しております。また食生活における脂質の過剰摂取が要因の一つに上げられており、全粒穀物(玄米)を中心として日本古来の低脂肪食がアレルギー体質の改善につながります。
 最近、全国約1万人を対象にした初の大規模疫学調査で、国民病ともいえる花粉症の正確な実態が初めて明らかにされました。その結果、全国平均の推計有病率は19.2%で、スギ花粉症に悩む人は国民の5人に1人に達しました。地域別では東海が28.4%と最多で、南関東23.8%、北関東20.9%、近畿20.5%で太平洋側が高く、スギ花粉がないとされる沖縄は2.8%で全国最低でした。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・1月23日のNHK教育「視点・論点」に所長が出演

 テーマは、「冬に多い心臓突然死」で話しました。原稿を見ずにテレビカメラに向かって話すのは緊張します。内容は、心臓突然死の発症時期には朝方、夕方、日曜日と月曜日、第一週、12月と1月に多い理由を述べました。人間には体内時計(サーカディアン・リズム)があり、朝方の交感神経の緊張のほかに、最近の過食による血中遊離脂肪酸の増加が原因であることを強調いたしました。心肺蘇生法のビデオ紹介は勿論、ワールドカップの観客の命の危機管理には、半自動除細動器を各スタジアムに40台設置するのが世界の常識であることを述べました。

・毎週水曜日午後20時00分から放送の地元サンTV「立原啓裕のからだにいい時間」に10回連続出演中
 生活習慣病予防関連のテーマにて、1月23日(水)から連続10回出演中です。是非ご覧いただき所長のメディカルタレント能力を評価してください。

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▼【兵庫県内の話題】

・ワールドカップなどスポーツ会場にAED配備を提唱、兵庫県医師会が協力姿勢

 兵庫県医師会(橋本章男会長)は、2002FIFAワールドカップの開催地のひとつになっている神戸市に、心臓発作を起こした患者へ迅速な処置を行うため、半自動除細動器(AED)の配備を訴えている。AEDは国内にまだ100台強しか普及していないが、このうち約60台は同会会員が所有しており、AEDを市へレンタルするなどの協力姿勢を示している。
 AEDは、バッドを患者に貼り付ければ自動的に心電図がモニターされ、心室細動が確認されれば利用者がボタンを押すだけで除細動が行われる「ワンボタン式」が特徴。総重量2から3kg、サイズは20から30cm四方と携帯しやすい。心室細動による心停止は、4分以内の心肺蘇生法と8分以内の除細動で救命率を43%に向上できるとされ、早期除細動の必要性が指摘されている。
 同会健康スポーツ医学委員会の河村剛史委員長(県立健康センター所長)は、「生命の危機管理体制を整備するためだ」と強調する。同会は会場の収容人員4.2万人からみて、最低40台のAEDが必要だと試算。価格が1台約70万円と、費用の観点からも会員のAEDを市に貸与する方法を提案している。同会は昨年、AEDの実技講習会を開き、国際マラソンではAEDを携帯してサポートした。2006年開催の兵庫国体までには300台のAEDを揃え、協力する考えだ。
 米国心臓協会の心肺蘇生法2000年ガイドラインは、心臓突然死の救命率向上で、一般市民が行うパブリック・アクセスAEDの正当性を示している。日本では、国際線の機内にAEDが搭載され、医師の指示を受けた救急救命士以外に、特例的に客室乗務員の使用も認められている。こうした背景から河村氏は、「医師は積極的にAEDの知識習得に努めるべきだ」と話している。
(2000年1月29日付けメディファックスより転載)

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▼【兵庫県外の話題】

・国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」

 推計の結果、2000年に1億2692万人だった総人口は、2006年の1億2774万人でピークを迎えます。総人口に占める老年人口(65歳以上)の割合は、2000年の17.4%から、2050年には35.7%に上昇し、3人に1人が高齢者になります。平均寿命に関しては、2000年の男性77.64歳、女性84.62歳から2050年では男性80.95歳、女性89.22歳に伸びると予測されています。
 兵庫県立健康センターが唱える「長寿の道は、自立自尊」を、団塊の世代は心して高齢期の準備を今から始めることが大切になってきています。そのためには常日頃から脊椎ストレッチウォーキングの習慣を身につけることが誰にでもできる心がけと思います。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1041件、団体57件の合計1098件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
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