健康ニュース 2002年7月9日送付 発行部数 1028件
**********************************************************************

<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

**********************************************************************

▼【TOPニュース】

・ワールドサッカーは、「台風一過」

 ワールドサッカーはオリンピックを超える世界のスポーツイベントであることが今回、やっと実感できました。これも日本選手の活躍のお陰です。ワールドサッカーは国対国の戦いであり、一瞬でも日本人の血潮が騒ぎ、心が一つになれたことは、日本国民である証を認識できた気がします。米国はサッカー人口は世界で一番多いが、不思議なことに米国サポータのフィーバーぶりが話題にならなかったのは多民族国家であるからかもしれません。韓国のフィーバぶりには驚きましたが、サッカー選手の26日間の兵役免除、北朝鮮艇との交戦のニュースを聞いて、兵役義務のない日本人こそ、誰が国を守っているかを真剣に議論すべきと思います。福沢諭吉先生の「一身独立、一国独立」を思い起こし、まず、国民一人ひとりが健康づくりの意識に目覚めることが国を守ることにもつながります。

---------------------------------------------------------------------

▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」−東京女子医科大学附属日本血圧研究所の過去と現在

 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

 神戸大学医学部卒業後、心臓外科医を目指して東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所(心研)外科に入局したのが1973年である。当時、北の札幌医科大学の和田壽郎教授、東京の榊原 仟(しげる)教授が日本の心臓外科のトップの座にあった。東京女子医科大学は心研を皮切りに消化器センター、脳神経センターと次々に臓器別施設を立ち上げ、全国からは出身大学の医局を嫌い、おのれの能力の可能性を信じた多くの医師が医療の新天地に集まった。
 榊原教授の入局時の言葉は今でも忘れてはいない。「医者は医師免許証によって守られている。病気を治すためとはいえ、無傷の患者にメスで切り開いても傷害罪にならないのは医師免許があるためである。諸君たちは、まず、医師免許証の重みを心して立派な外科医になるように」と言われた。また、外科医の心得として、「鬼手仏心」、すなわち、「鬼のような高度な技術を身につけ、患者には仏のこころで接すべし」と言われた。当時、人工心肺装置を用いた体外循環技術は初期の開発段階で、心臓の中を開けて手術をする開心術は、大動脈の根元を遮断して30分以内に心内修復を行う技術とスピードの勝負であった。東京女子医大での手術成績は日本の他の施設と比べれば最高レベルではあったが、まだまだ満足できるものではなかった。心研内には手術成績の更なる向上のためには、新しい技術を臆することなく全力で取り組む気運がみなぎっていた。多くの患者が技術及ばずして亡くなったが、患者家族とともに全力を尽くした時代でもあった。手術が成功したときは無上の喜びを感じ、次なる挑戦の糧にした。常に女子医大の技術はどの大学にも負けない最高のレベルであるとのプライドがあった。
 東京女子医大心研とは、"狼友"の集まりである。狼友とは、東洋の思想より発し、よく逆境に耐え、強い意志を持ち、群れをなしては団結力に富み、孤独にあたっても荒野を駆けめぐる冷厳な魂の持ち主のことをいうのである。1970年から1980年代前半の心臓外科の創成期から充実期に心臓外科医として修練し、全力を投入できたすばらしい環境が過去の東京女子医大にはあった。
 本年6月28日に「手術ミスと証拠隠滅」にて東京女子医大心研外科の2人の外科医が逮捕され、女子医大の病院姿勢まで問われている大事件にまで発展した。しかも、心房中隔欠損症は心臓外科医となって最初に行う開心術で、手術としては簡単であるがゆえに事故なきように手術を行う先天性心疾患である。
 なぜ、正直に人工心肺の操作ミスによる手術死亡を家族に伝え、謝罪をしなかったのかと病院の姿勢が問われている。謝罪できないのであれば、組織ぐるみの隠蔽と言われても仕方がないと思う。体外循環を担当した10年目の外科医が、「自分は人工心肺をまわした経験があまりありませんので、まわせません」と正直に言えば、未然に防げたのではないだろうか。しかし、「10年目にもなっていて人工心肺もまわせないのか」と周りから言われることを恐れて言えなかったのかもしれない。また、その心の底にはたかが心房中隔欠損症の手術だからと油断があったのかもしれない。
 われわれの時代の心臓外科医の修練は人工心肺をまわす(操作する意味)ことから始まった。1986年にカルフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医療センターに留学した当時、年間約2000例の開心術の体外循環はすべてパーヒュージョニスト(体外循環技士)が担当していた。ましてや心臓外科も成熟期となっている現在では、当然、臨床工学士の資格を持った体外循環技士に体外循環を担当させる必要がある。体外循環技士の人員不足を不慣れな外科医がカバーする時代は終わったと思う。先にも述べた事件後の病院の姿勢を含めて、これが現在の女子医大の本質かもしれないと思うと少し寂し気がする。
 責任を感じるとは、人の命を感じることである。

 続く

バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

---------------------------------------------------------------------

▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome)と心臓突然死について

 心臓突然死の原因には、急性冠症候群と交感神経緊張による血中遊離脂肪酸の増加が考えられています。最近、急性冠症候群という言葉が医学界では盛んに使われるようになりました。死亡した急性心筋梗塞患者の原因となった冠動脈病変を調べてみた結果、70%の患者の冠動脈狭窄が50%以下であるという意外な結果がみられました。50%以下の冠動脈狭窄では、激しい運動でも冠動脈内の血流が狭窄により相対的に減少することはなく、運動時狭心痛もなく、まったくの無症状です。冠危険因子(高脂血症、糖尿病、高血圧、肥満、喫煙など)を持っている人は、冠血管内膜下にLDLコレステロールが蓄積したプラークが内腔に膨隆している可能性が高い。時にそのプラーク膜が破裂して、一気に冠動脈内血栓によって冠動脈内閉塞が起こり、心筋梗塞に陥ります。中には心臓突然死にいたる場合もあります。慢性的に徐々に冠動脈狭窄が進行している労作時狭心症は安定狭心症といわれる所以は、プラークが破裂することがないからです。また、狭窄部位が完全閉塞になっても、徐々に進行している場合には心筋虚血部位に近傍の冠血管からの副血行路が形成されており、心筋梗塞にはならない場合が多いようです。
 最近の研究論文では、冠危険因子を持っている人は、若年者でも冠動脈にプラークが見られており、冠危険因子の修正が早急に必要です。

--------------------------------------------------------------------

▼【兵庫県立健康センターの話題】

・「健康ひょうご21大作戦」県民運動の今年の重点目標に「食の健康」

 兵庫県では平成13年度から県民運動を展開していますが、平成14年6月17日に開催された「健康ひょうご21県民運動推進会議」総会では、今年度の県民運動重点目標として「食の健康」の普及と実践活動を行うことが掲げられました。
 また、兵庫県健康財団会長の家森幸男京都大学名誉教授が座長となり、総会フォーラムが同時開催されました。このフォーラムの模様は、7月14日朝9:45からサンテレビ《健康笑顔》で放送されます。

---------------------------------------------------------------------

▼【兵庫県内の話題】

・第34回日本動脈硬化学会市民公開講座のお知らせ

 日時:平成14年7月19日午後18:00〜20:00
 場所:神戸国際会議場一階メインホール
 内容:
  基調講演「死の四重奏にならない為に」
   松澤佑次(大阪大学大学院医学系研究科教授)
  パネルディスカッション「きれいな血管が創る健やかな生活」
   横山光宏(神戸大学大学院医学系研究科教授)
   板倉弘重(茨城キリスト教大学生活科学部教授)
   河村剛史(兵庫県立健康センター所長)
   山本 章 (箕面市立介護老人保健施設施設長)
  司会
   木場弘子(キャスター)

---------------------------------------------------------------------

▼【兵庫県外の話題】

・待望の医師指示なし除細動承認へ

 救急救命士の業務範囲拡大に向けた条件などを協議するため、厚生労働省と消防庁が合同で開く検討会のワーキングチーム(座長・島崎修次日本救急医学会理事長)は6月27日、医師の個別の指示がなくても、患者の心臓に電気ショックを与える除細動器の使用を救急救命士に認めることを盛り込んだ座長報告書の骨子案をまとめました。
 心臓突然死患者に対して、意識消失後4分以内に心肺蘇生法を行い、8分以内に救急救命士が現場で電気ショックを行えば、約半分の人が助かる時代が到来します。一般市民が進んで心肺蘇生法を習得し、「お互いの命を守る社会づくり」に参加する啓発活動がますます大切になってきました。

---------------------------------------------------------------------

▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人974件、団体54件の合計1028件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

**********************************************************************

 兵庫県立健康センター
  〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
  TEL: (078)441-2234
  FAX: (078)441-2149
  URL: http://www.hyogohsc.or.jp/
  mail: mail@hyogohsc.or.jp

**********************************************************************


Copyright (C) 2004 Hyogo Vitual Health Science Center