健康ニュース 2002年10月15日送付 発行部数 1080件
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・“万事、塞翁が馬”ならぬノーベル賞
 島津製作所サラリーマン研究者の田中耕一氏(43歳)のノーベル化学賞の受賞は、不況経済がら脱しきれず自信をなくしかけている日本を大いに元気づけてくれました。前日のノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東大名誉教授の話題が消えてしまっているほどです。「技術の島津製作所」の誇り、日本企業の技術力を支えるエンジニア魂に光を当てたスウェーデン王立科学アカデミーに敬意を表するものです。
 病気は異常蛋白によって引き起こされることが分かっており、その蛋白質の質量分析装置(ソフトレーザー脱着法)は今後の病気の解明にに大いに貢献するものです。兵庫県播磨科学公園都市には“電子の光”といわれている大型放射光装置がありますが、ここから次なるノーベル賞受賞者が生まれるか興味のあるところです。
 今回のノーベル賞受賞の経緯はまさに“万事、塞翁が馬”で、実に痛快でした。「人の命を救う研究」に対する思いを貫いた研究者は現在43歳、受賞後の長すぎる人生も淡々と生きて、俗事に惑わされることなく“万事、塞翁が馬”を貫いてほしいものと願っています。

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」−危機を知らせる大声がいる
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

  2001年6月8日に大阪教育大学付属池田小学校で起こった児童殺傷事件の犯人宅間守容疑者の公判が行われている。この事件を契機に、外部からの不審者の侵入を防ぐために校門が閉鎖され、学校内にはモニターカメラが設置される学校が多くなった。池田小学校では、あまりに悲惨な事件により精神的障害を蒙った児童のみならず愛するわが子を失った家族のPTSD対策が大きな課題として残っている。
  大教大付属の池田高校自治会から事件後一周忌を迎える今年の6月8日に私に講演をしてほしいとの依頼があった。池田高校では、以前から学園祭が企画されていたが、この事件のために中止となった。しかし、学生自治会からこの機会に命の問題についての講演会を開催しようとの企画が持ち上がり、私に白羽の矢が当たったのである。どうして私を指名したのかと聞いたところ、自治会長はインターネットサーフィンで「命の尊厳、心肺蘇生法、命の危機管理」を入れて検索したところ、河村剛史の名前が多く見られたのでお願いしたとの返事であった。自治会長の情報検索と依頼の経緯にも感心した。
  今まで講演の依頼があればできるだけ時間の都合をつけ応じることしている。しかし、この講演だけは学生自治会の自主的講演会とはいえ、一周忌追悼式が行われている同じ日に「命の危機管理」についての講演を行うことは勇気のいることである。マスコミの反応も気になり、話題を呼ぶことになるが逆効果となることもあると悩んだ末に断った。
  私は常日頃から、心肺蘇生法講習会をとおして技術よりもむしろ危機を知らせる大声の大切さと、それを聞きつけた時には何をさておき現場に駆けつけるという「命の危機管理」の大切さを指導してきた。この事件が起こる前に私の心肺蘇生法の講習会を受講されていたならば、生徒の命の危機に際し、一人の職員が「助けて」と大声で叫べば、全員が「どうしたのだ」と現場に駆けつける体制が強化されていたと思う。危機に直面したとき大声を出す勇気と誰もが駆けつけることが危機対応マニュアルの基本である。別の言い方をすれば、一人の命を全員で守ることが「命の危機管理」である。類を見ない凶悪な事件ではあるが、「同時に一人でも多くの職員が宅間被告と対峙することができていれば・・・」と思うと心が痛む。
  題名は忘れたが、警察署長が自分の犯した殺人の罪から逃れるために無実の人を凶悪犯にしたて追跡する米国映画を思い出した。逃亡生活の最後に米国東部の妻の実家に逃げたが、ここは古い戒律を守り、ランプで生活している地域であった。警察署長が馬小屋の前に無実の人を追いつめ、証拠隠滅のため銃で撃ち殺そうとした時、子供が家の玄関の前に吊り下げられている鐘を打ち鳴らしたところ、周辺の畑で農作業していた住民全員が鍬や鋤を打ち捨てて鐘が鳴っている家に集まって来た。さすがの警察署長も多くの住民の前で丸腰の無実の人を撃ち殺すことはできず、駆けつけた警察官に取り押さえられ、ようやく無実の罪が晴れたというストーリーであった。昔ながらの生活を営んでいる運命共同体における危機管理は、危機を知らせる鐘の音であり、この音を聞けばすべての作業を中断し、その家に駆けつけることであった。
  「お互いの命を守る社会づくり」とは、「誰か来て」と助けを求める叫び声が聞こえれば、仕事を中断して「どうしたのだ」と駆けつける地域社会の基本ルールづくりである。心肺蘇生法では、目の前で突然人が倒れたなら、意識の確認をし、意識がなければできる限りの大声で「誰か来て」と叫ぶことが命の危機を知らせることになる。講習会では大声で必至に助けを求めることの重要性を特に強調し、受講者には今の日本人に忘れかけている大声を出す訓練をしている。

 続く

バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・脂肪細胞がら分泌されるレプチンの増加は高血圧の原因
 脂肪細胞は過剰エネルギーを中性脂肪として蓄積する単なるエネルギー貯蔵庫ではなく、さまざまなホルモンや生理活性物質を分泌して、生体機能を調節する機能を有しています。その分泌ホルモンの発見の発端がレプチンで、エネルギー過剰になれば脂肪細胞から分泌され、脳視床下部のレプチン受容体に結合して、食欲低下を来たします。また、下垂体に作用して甲状腺刺激ホルモンの分泌を介して甲状腺ホルモンの分泌を高め、同時に交感神経活動を亢進することによりエネルギー代謝を亢進して過剰エネルギーの消費を促す働きをします。しかし、脂肪細胞が肥大した肥満状態では、レプチンの作用が低下するレプチン抵抗性となり、本来の機能を果たせなくなります。悪いことにレプチンの交感神経活動の亢進は維持される為に肥満になればなるほど高血圧になるといわれています。肥満で高血圧の人は、まず減量によりパンパンに張った脂肪細胞中の中性脂肪を消費させ、余裕を持たせることが高血圧治療となります。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・健康運動実践指導者養成講習会の開催
 10月15日から18日、29日から31日、11月13日から15日の計10日間、県内の公的機関職員を対象として厚生労働省認定の健康運動実践指導者の養成講習会を開催します。本年は26名の方が資格取得を目指して受講されます。

・健康運動指導者登録更新研修会の開催
 12月11日、12日の両日、県内の公的機関において健康づくりのための運動指導に従事している健康運動指導士、健康運動実践指導者を対象として登録更新研修会の開催を予定しています。詳しくは兵庫県県民生活部健康局健康増進課(TEL.078-362-3247)まで

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▼【兵庫県内の話題】

・兵庫県医師会主催による自動除細動器(AED)講習会の開催
 10月16日の姫路市医師会を皮切りに兵庫県下9ヶ所で県医師会の医師を対象に、「AEDを使用した救命処置」の実技講習を行います。本年度中に300台のAED購入(現在80台購入)を目標に、来るべき2006年兵庫のじぎく国体におけるAEDを用いた安全体制の確立を目指しています。講師は兵庫県立健康センター所長河村剛史が勤めます。
 AEDの開発は、心臓突然死の唯一の有効な治療法としてノーベル賞に値する人類の貢献があります。中高年の心臓突然死は心室細動が原因でおこり、5分以内に除細動(電気ショック)を行えば50%の人が助かります。兵庫県医師会が中心となって行っているAED普及計画は、医師が率先してAEDを所持し、県民にたしてAEDの有用性をアピールすることが狙いです。

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▼【兵庫県外の話題】

・10月1日から健康保険法が一部改正されました。
 70歳以上では1割(一定所得以上では2割)負担となり、3歳未満は2割負担になりました。3歳から69歳は、現行通りで被用者保険では本人2割、家族3割、国保3割負担ですが、平成15年4月から3割負担に統一されます。
 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が最近まとめた医療費動向調査によると、高齢者の医療費が増え続けているのに対し、サラリーマン本人の医療費は4年連続で減り続けております。リストラなどで被用者保険(被雇用者が加入する健康保険や共済保険の総称)の加入者が減っているほか、加入者が治療をがまんしていることも要因と考えられると説明しています。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1026件、団体54件の合計1080件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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 兵庫県立健康センター
  〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
  TEL: (078)441-2234
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