健康ニュース 2003年10月1日送付 発行部数 1284件
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<本号の目次>
▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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▼【TOPニュース】

・第25回日本健康増進学会の開催に向けて学会長挨拶
 急増する生活習慣病に対して、運動・栄養・休養からの生活習慣の見直しは、一次予防、2次予防、3次予防に不可欠なものになっています。こうした中、平成14年11月の高円殿下,次いで福知山、名古屋マラソンでの心臓突然死のニュースは、中高年のスポーツ時の安全管理と心臓突然死発生時のAED(自動体外式除細動器)の重要性が社会的に認知されました。
 昭和53年の第一次国民健康づくり対策として、生涯を通じる健康づくりの推進を図るために、まず、都道府県単位に中核施設として健康増進施設が整備され、次いで、市町村保健センターが整備されました。昭和63年からの第二次国民健康づくり対策として、運動習慣の普及に重点を置き、民間フィットネスクラブを含めた健康増進認定施設の推進を行いました。平成12年からは第三次国民健康づくり対策として、21世紀の健康寿命の延伸のため「健康日本21」、次いで「健康増進法」が制定され、現在に至っています。
 しかしながら、生活習慣病の生活習慣指導には、心臓突然死、心筋梗塞、脳卒中の危険因子を有した対象者が多く、市町村の保健センターに対して、安全面を配慮した、かつ具体的な生活習慣の見直し指導を行う中核センターとして、全国の健康増進施設が再認識されようとしている重要な時期と考えます。
 こうした時代背景の中、第23回に引き続き、第25回日本健康増進学会の学会長を引き受けることになりました。平成13年11月1日、2日に第23回日本健康増進学会を淡路・夢舞台国際会議場で開催し、延べ2000人の参加者を得ました。また、学会発表は、全国に先駆けて、インターネットを通して国内外に発信したことも画期的でした。
 今回は、「健康増進施設の過去、現在、未来」をテーマに、まず、原点に立ち返り、健康増進施設会員のための生涯教育の場として学会を企画いたしました。第23回大会のような派手さはありませんが、健康増進施設の今後のあり方をじっくりと討論したいと考えています。

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▼【連載特集】
「あなたは愛する人を救えますか」―AEDを一般市民が使用しても、法的な問題はない。

 兵庫県立健康センター 所長
   河村剛史

 心臓突然死の原因である心室細動の唯一の救命法は、発症5分以内にすぐ隣の人がAED(自動体外式除細動器)を用いて電気的除細動を行うことである。欧米では、パブリック・アクセス除細動(PAD)と呼んでいる。
 国の第3次構造改革特区として、「非医師による自動除細動器を用いた救命推進」を提案し、兵庫県を特区として認める要望を提出したことが直接のきっかけとなり、厚生労働省は2004年度から全国的に一般市民がAEDを使用できる方針を公式表明した。いよいよ日本においても、長年待ち望んでいた「お互いの命を守る社会づくり」体制がスタートする。
 厚生労働省の見解は、一般市民がAEDを次の4つの条件等において使用する場合には、一 般的に医師法第17条に違反しないとした。
1.医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得ることが困難であること。
2.使用者が対象者の意識、呼吸がないことを確認していること。
3.使用者がAEDの使用に必要な講習を受けていること。
4.使用されるAEDが医療用具として薬事法上の承認を得ていること。
 市民公開講座にて法律学者の見解を聞く機会があったが、もともと一般市民のAED使用には法的な問題はないとのことであった。
 元来、医師法は、医師の業務独占を規定したもので、特に、医師法第17条には「医師でなければ医業をなしてはいけない」とされている。"医業"とは、"医行為"を"業"として行うことで、"業"とは、営利目的の有無に関わらず、不特定多数のものに対して反復継続の意図を持って行うことで、緊急避難的行為は除かれる。また、"医行為"とは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は及ぼす恐れのある行為とされている。平たく言えば、医療行為とは、医師が医学的判断と技術を用いて不特定多数の患者に反復継続して治療を行うことである。
 一般市民が心室細動を起こした人に対してたまたまAEDを使用しても、緊急避難的行為とみなされ、医師法には違反しない。この点が、救急救命士が救急業務として同じAEDを反復継続して使用する場合("医行為"と見なされる)と大いに異なる。
 また、AEDは心室細動のみを自動診断し、たとえ、意識のない正常心拍の人にAEDを装着しても、「除細動の必要ありません」の音声が発せられ、間違って除細動がかかることがないと認められた安全な装置である。すなわち、AED使用は「人体に危害を及ぼし、又は及ぼす恐れのない」行為です。
 さらに、心肺蘇生法と同様、AED施行に対しても、民法の「緊急事務管理」が適応され、「法律的には悪意または重過失がない限り、善意で実施した救命手当ての結果に民事的責任を問われることはまずない」とした。また、刑事上も、救命手当は「社会的相当行為」として違法性を問われず、「注意義務が尽くされていれば過失犯は成立せず、その注意義務の程度は医師などに比べて低い」とした。
 注目すべきは、厚生労働省のAED使用条件に、「医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得ることが困難であること」が示されており、見方を変えれば、医師がその場に居合わせた場合には、まず、医師がAEDを使用しなければならないと読み取れる。兵庫県医師会が、2001年11月から医師会員を中心にAED講習会を開催しているのは、将来、医師の"不作為"による道義的責任が問題になると考えたためである。

 続く

バックナンバーにつきましてはセンターホームページ「電子ジャーナル配信」
 http://www.hyogohsc.or.jp/entry/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・脊椎ストレッチウォーキングは、理想的な大腰筋強化法です。
 起立歩行には骨盤筋群が重要な働きをしており、主には前方では腰椎と大腿骨小転子間に大腰筋、骨盤後面と大腿骨間に大殿筋があります。 2003年8月29日にフランスで行われた世界陸上選手権大会200mにて末続慎吾選手が銅メダルを取ったことは有名ですが、実は、末続選手の走法には、大腰筋が深くかかわっております。「トカゲ走法」と呼ばれ、大腰筋に張力を溜めに溜めたところでパッと大腰筋を収縮させ、大腿を前に一気に 振り出している。大腿が上がり切った時のスピードが速ければ速いほど、そのまま前に行こうとする移動慣性力がより強く大腿に働きます。
 膝を伸ばして、踵から地に付ける脊椎ストレッチウォーキング法は、まさに大腰筋を使う歩行法です。姿勢を正し、膝を伸ばして、足を大きく振り出す訓練が大腰筋強化になります。大腰筋が鍛えられれば鍛えるほど、足を前に振り出す力が増し、歩幅が広くなってきます。
 兵庫県県民運動となった脊椎ストレッチウォーキング「毎日歩こう。背筋を伸ばして、今のあなたにもう1000歩」は、世界に誇る運動理論に支えられた理想的な歩行法と言えます。

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▼【兵庫県立健康センターの話題】

・第25回日本健康増進学会の開催のお知らせ
 主催:全国健康増進連絡協議会
    会長 竹内義員 香川県大的場健康体育センター所長
 学会長:河村剛史 兵庫県立健康センター所長
 日時:平成15年10月30日(木)、31日(金)
 場所:兵庫県立健康センター・コープ神戸生活文化センター
 学会長講演1「生活習慣病指導管理料の運動処方箋を受けることができる健康スポーツ関連施設のあり方」
 学会長講演2「運動時高血圧は心臓突然死の危険因子である」
 なお、30日(木)午後13:30から14:30まで特別公開講演として「禁煙支援のための体制づくりのコツ」について禁煙活動の第一人者である奈良女子大学の高橋裕子教授にご講演いただきます。入場料は1000円です。日ごろから禁煙活動に携わっておられる方及び禁煙活動に興味をお持ちの方のご参加をお待ちいたしております。
 詳細は、兵庫県立健康センターのホームページ(http://www.hyogohsc.or.jp/)の学会予定の項をご覧ください。

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▼【兵庫県内の話題】

・第15回兵庫のまつり「ふれあいの祭典」ー美しい未来への道
 主催:ふれあいの祭典実行委員会
 日時;平成15年10月4日 午後13:00〜16:00
 場所:姫路城三の丸広場特設ステージ
 問合せ先:ふれあいの祭典実行委員会事務局 電話079-362-3994
 入場無料です。

・「脊椎ストレッチウォーキングin明石」の開催のお知らせ
 主催:兵庫県医師会および健康スポーツ関連施設連絡協議会
 開催日時:10月19日(日) 9:00〜受付、10:00開会(12:30頃終了)
  会場:明石市生涯学習センター(明石公園内)
  講演:「なぜ運動が必要か」ほか
 申込み、問合せは、明石市医師会(078−918−0751)まで

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▼【兵庫県外の話題】

・第51回日本心臓病学会市民公開講座「突然死は救える」は有意義でした。
 平成15年9月7日(日)に東京国際フォーラムで開催された市民公開講座では、2000名近い参加を得て熱心な討論がなされました。
 注目すべきは、AEDの市民普及に関して、中島正治厚生労働省大臣官房審議官、樋口範雄東京大学法学部教授が、「AEDの市民普及には、行政と法的な壁はない」との発言は、会場の聴衆にも、行政と国民とが一体となったAED推進の大きな“うねり”を感じたものと思います。
 法的な立場から樋口範雄氏は、一般市民のAED使用は医師法17条に反しない理由として、1)医師法は医療を生業としている者を対象としている、2)生業とは、医療行為として反復して行う場合である、3)人の命を救うための緊急避難的なAED使用は医療行為ではない。また、民法698条においても、善意で救命行為を行い、うまくいかなくても罪にはならない(緊急事務管理)と明記されている。ただ、この法律は、傷病者と無関係な人に対して救命行為を行ったことを想定しており、イベントの主催者、警備関係などの配慮義務のある人に関しては罪に問われる場合もあるとの法的解釈を述べました。
 国の行政の立場から中島正次氏は、一般市民のAED使用の条件としてのAED講習会受講は、AEDの存在を社会に知らしめる手段として考えており、受講者のみがAED使用が許可されることではないとの柔軟な考えを述べました。
 公開講座の結論として、AED普及は、一般市民に対する「命の危機管理教育」であり、「お互いの命を守る社会づくり」を目指したものでなければならないとの認識を講演者間で共有できたことは大きな収穫でした。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人1226件、団体58件の合計1284件の方々に送付させていただきました。誠にお手数ですが貴メールアドレスへのマガジンの送付停止につきましては、下記メールアドレスに連絡いただきますようお願い申し上げます。
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