Health for all (健康ニュース)Vol.56  2004年3月31日送付
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  <本号の目次>
  ▼ 兵庫県立健康センター閉館(廃止)に際して -ご挨拶-
  ▼ お詫びとお願い
  ▼ 連載特集 「あなたは愛する人を救えますか」
  ▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
  ▼ 兵庫県立健康センターの話題
  ▼ 兵庫県内の話題
  ▼ 兵庫県外の話題
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  ▼ 兵庫県立健康センター閉館(廃止)に際して -ご挨拶-

・新しい門出は、生涯自立支援センターへの展開
 兵庫県立健康センターは平成16年3月31日をもって22年間の歴史を閉じます。
 兵庫県は、故須田勇神戸大学学長が提唱した「健康科学」の発祥の地です。昭和57年を「健康元年」と称し、兵庫県健康憲章を制定いたしました。兵庫県立健康センターはこの理念に基づいて設立されたセンターです。
 健康づくりの目的は、健康増進から生活習慣病予防に変化していきましたが、われわれは真の健康の意義である「健康は自らを知る、生きる喜び」をもっと多くの県民に感じてもらいたいと日々の生活習慣の指導に努力してまいりました。
 「長寿の道は『自立自尊』」を達成するには、筋肉トレーニングの運動習慣の意識なしには80歳の壁を越えることはできません。別の言い方をすれば、現在社会では80歳を超えた人には専属のトレーナーが必要です。筋力は気力、生きる力と考えています。
 兵庫県立健康センターの旧職員は、生涯にわたり自立生活を過ごし、最後の命の一片まで燃え尽きさせる「自立自尊」の人々を支援するセンターへの展開を目指し、新天地で新たなる挑戦をいたします。

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  ▼ お詫びとお願い

 4月下旬から5月下旬まで「hyogohsc.or.jp」ドメインによるすべてのサービスが不安定になります。
 この電子ジャーナルは兵庫県立健康センターが月1回で度不定期に送付いたしてまいりましたが、この度の兵庫県立健康センター廃止に伴い、4月下旬よりホームページ(http://www.hyogohsc.or.jp/)を含め、バーチャルな健康科学センターとしてその機能の移転作業に入らせていただきます。
 つきましては5月下旬くらいまでの間、不定期にホームページ及びメールサービスを停止することがあります。なお、兵庫県立健康センター代表(mail@hyogohsc.or.jp)及び職員宛のメール([ローマ字名前]@hyogohsc.or.jp)につきましては受信を確認いたしました際は、必ず受信確認メールを差し上げますので、ご理解の上ご利用いただければと存じます。
 大変ご迷惑をおかけいたしますが、今後ともよろしくお願い申し上げます。

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  ▼ 連載特集

あなたは愛する人を救えますか」− Do Not Resuscitate (DNR)、心肺蘇生は行わない
兵庫県立健康センター 所長
河村 剛史

 2004年3月8日に母が亡くなった。享年87歳の大往生であった。母には私の祖父母、父の3人の介護の経験がある。その母が日頃話していたことは、死ぬまでトイレは自力で行くことであった。
 また、阪神・淡路大震災では、崩壊した家屋の瓦礫の中から救出され九死に一生を得た強運の持ち主である。震災後、神戸の自宅の再建をあきらめ、兵庫県氷上郡柏原町の実家で一人暮らしをするようになった。幸いに田舎の家は、表玄関から裏庭まで約50mの土間が通じており、元来、元気な母にとって日常生活そのものが適当な歩行運動になっていた。近所付き合いも気に入っているようで、都会より田舎の方が高齢者には過ごしよい環境と言っていた。
 2004年正月を田舎で一緒に暮らそうと姉が実家に帰ってきていた年の暮れに転倒し腰を強打した。幸いに姉が家事をしてくれるので母は非常に喜んで腰の痛みがなくなるまでと家事を任せていた。体重も軽く関節痛もなく若い時から足腰を鍛えていると自負していた母には、腰の痛みは安静にすれば直ると考えていた。
 母には会う度ごとに、足腰は積極的に動かさなければ筋力はすぐに衰える危険性があることを言っていたが、腰の打撲の痛みがなくなり動き始めると筋力の衰えによりまた転倒することを何度か繰り返し、痛みのためにますます動かなくなる悪循環となった。
 家族による介護の大変さを熟知していた母にとって、痛みがあっても自力でトイレに行くことと水分は必ず身体を起こして飲むことを実行した。私は、高齢者の脱水は脳循環を低下させボケにつながるので、深層水を定期的に飲用することが重要であることを母が元気な時に話していたが、呆けるのを嫌っていた母はこのことだけは守っていた。しかも誤嚥防止のためと言ってストローで飲む用心さも持ち合わせていた。
 死亡した3月8日は、健康センターが休みなので母の顔を見に実家に帰って診察をした。表情がいつもの母の顔ではなく、私の顔をみて兄の名前を言うので、子供の顔を見間違えるようではもう命も長くないと母に言うと笑っていた。姉が朝から葛湯しか飲んでいないと言うのでこの2,3日の命かなと直感した。
 母がベッドのそばの簡易トイレに起き上がって行く姿が苦しみに満ちており、心臓にも過剰な運動負荷がかかり一過性に心房細動になったので、母にはもう自力ではトイレは無理であると言った。その時、2,3日前に作った歌を私に見せたが、紙には「しんどさを 誰がわかるか 栄子春」と書かれていた。まさに辞世の句となった。
 姉には母は寝ている間に死んでいるよう気がするから驚いても救急車を呼ばないように、また水分を摂らなくなっても点滴をせずに自然経過を見るようにと話して神戸に帰った。しかし、別れ際に母は笑顔を浮かべながら「また来てね」と言ったくらいでその夜に亡くなるとは思っていなかった。
 夜の7時に母は苦しい思いをしながらもトイレに行ったので、姉はしばらくの間と思いベッドの傍で安心して寝込んでいた夜の9時、電話の音で目覚めた時には母は亡くなっていた。母はトイレに行こうとしたのではなく、床の間の仏壇の方に行こうとして命の火が燃え尽きたのである。母の死を悟った"死に様"の凄さを思い知らされた。
 母が私に残したものは、介護には介護される人間の"生き様"を支援する個別の介護の重要性である。生涯自立を信条にしている人には、生涯自立を支援する介護センターが必要となる。現在の社会では、80歳を超えた人には筋肉を鍛える意欲と専属の筋肉トレーナーの指導が必要である。筋力こそは気力、生きる力と考えている。

 続く

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  ▼ 健康づくりワンポイントアドバイス

・脊椎ストレッチウォーキングの極意は、「まっすぐ立ってから歩く」

 最近、デューク更家氏のウォーキング法がマスコミで有名になっています。脊椎ストレッチウォーキングと同じように重心の移動を中心に前足を振り出しますが、彼の説明は後足でけって前足を振り出す従来の手法を踏襲しています。
 脊椎ストレッチウォーキングは片足に重心を乗せて、対側の足を前に振り出し、踵から地につけると同時に踵におへそを乗せるように重心を前足に移動する歩行法です。
 専門的には、末続選手の走法(なんば走り)に類似した大腰筋を使った前足の振り出しに特徴があると思っています。脊椎ストレッチウォーキングの説明に、「まっすぐ立ってから歩く」、すなわち直立姿勢から足を振り出す歩行法です。
 先日、京舞の人間国宝の井上八千代さんが98歳で亡くなりましたが、前日までお孫さんに京舞の指導をしていたと報道されていました。日本舞踊の基本である正しい姿勢を維持するために生涯にわたり筋肉を鍛えた努力の賜物と思います。立ち振る舞いの美しさは、静から動への動きの瞬間です。
 脊椎ストレッチウォーキングは、腰すじ、背筋、首筋をのばした正しい姿勢の静止した状態から足を振り出す歩行法です。日常生活において、常に正しい姿勢を意識するには、「まっすぐ立ってから歩く」動作の繰り返しと考えています。
 兵庫県健康づくり行動指標の一つである「毎日歩こう 背筋を伸ばして 今のあなたにもう1000歩」をキャッチコピーに脊椎ストレッチウォーキングを県民運動として更なる展開を計りたいと考えています。

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  ▼ 兵庫県立健康センターの話題

・平成16年4月1日から財団法人兵庫県健康財団「からだの健康づくり部」としてスタートします。

 兵庫県立健康センターの所長以下の旧職員9人体制(専門職7人、事務職2人)で新設された「からだの健康づくり部」で活動を継続します。
 健康づくりに関する県民啓発活動が主な業務になります。
1)自動体外式除細動(AED)の普及活動
 河村所長のライフワークである心肺蘇生法の普及活動は17年目を迎え、今年1年はAEDの設置が決まっている県下25カ所の健康福祉センター、18ヵ所の県立スポーツ施設の職員を中心にAED講習を行います。
2)脊椎ストレッチウォーキングの県下の普及啓発
 兵庫県医師会、健康スポーツ関連施設連絡協議会が中心となって展開していた普及活動が、兵庫県として積極的に県下に普及する展開となりました。長寿の道は『自立自尊』の啓発理念の基本になるキャンペーン活動がいよいよ本格化します。

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  ▼ 兵庫県外の話題

・平成16年3月18日に行われた第3回「非医療従事者によるAEDの使用のあり方検討会」の討論内容

1)非医療従事者によるAEDの使用に関しては医師法17条に違反しないことが明確にされました。
 たまたま遭遇した一般市民がAEDを使用しても、医師法17条の反復継続性(医業)には相当しないとの確認がなされました。
 ヘルスケアプロバイダーのようにあらかじめAED使用が想定されている場合においても、以前に示した4つの使用条件を満たす場合には医師法違反とならないことの再確認がなされました。さらに、4つの使用条件を満たさない場合においても、個別の判断にて緊急避難的と見なされる場合には医師法違反にならないとの踏み込んだ判断がなされました。
2)AEDの普及活動として、「救急の日」、政府広告の活用、小中高等学校の教育に加え、一般市民のAED普及講習会の開催などの提案がなされました。

3)AEDの設置場所として、法律上強制することは難しいので、この委員会として設置場所の提言をすることになりました。

 平成16年3月6日の衆議院予算委員会第5分科会において、兵庫県の赤松正雄参議議員からのAED検討会の進捗状況に関する質問に対して、岩尾政府参考人の答弁の中に兵庫県立健康センター河村先生という固有名詞が出されており、第1回目検討会における河村所長のリアリング講演の提案がかなり採用されているような気がしています。全体として検討内容はAED普及を優先に考える方向に向かっているように思います。

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   兵庫県立健康センター
    〒658-0081神戸市東灘区田中町5丁目3番20号
    TEL: (078)441-2234
    FAX: (078)441-2149
    URL: http://www.hyogohsc.or.jp/
    mail: mail@hyogohsc.or.jp

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