健康ニュース 平成12年3月4日送付 発行部数 458
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<本号の目次>

▼ TOPニュース
▼ 連載特集
▼ 健康づくりワンポイントアドバイス
▼ 兵庫県立健康センターの話題
▼ 兵庫県内の話題
▼ 兵庫県外の話題
▼ お願い

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<本文>
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▼【TOPニュース】

・ 心肺蘇生法のテレビ放送のご案内
 3月11日(土)午前8:45から9:00にサンテレビ(36ch)の健康番組「すこやかライ>フ」で、心肺蘇生法の家庭内普及版が放送されます。兵庫県では平成2年度から所長>の河村剛史が中心となって、心肺蘇生法県民運動が展開され、5年間で108万人の講習参加数を達成しております。
 今回は、15分間のテレビ放送で、家族が知っておくべき救急処置法を解説つきで放送します。ご家族揃ってご覧いただくのはもとより、保存版としてビデオに収録されることをお勧めします。
  ・1人で行う心肺蘇生法:成人、子供、乳幼児
  ・異物による気管内閉塞除去法:成人、乳幼児

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▼【連載特集】

「あなたは愛する人を救えますか」その8−心肺蘇生法は「民主主義教育」
 兵庫県立健康センター所長
  河村剛史

 1998年の新しい風潮として,若者の間で「ジコチュウ」が広がってきている.「ジコチュウ」とは,自己中心のことで,他人の目を気にせずに自分のあるがままに行動し,何よりも自分自身が心地よく感じている新世代人間である.日本の政治経済においても,構造改革,規制緩和の風が吹き荒れる中で,若者の中でも従来の常識に縛られない自己流の生き方を示しているとも言える.
 古来から日本人の道徳感の中で最大の美徳とされているものは,「他人に対する思いやり」である.この道徳感は儒教の影響を受けており,『論語』の中を貫いている「忠恕」の精神である.孔子は「恕」の精神を「己の欲せざる所は人に施すことなかれ」と説いている.事にあたって先方の立場になり,先方の心理状態になって考察してやることであり,あくまでも行為を前提にした精神である.しかしながら,現在の日本では,「人に迷惑になる事はやらない」という自分の行動規範に変化し,「他人は他人,自分は自分」という他人を干渉しない無作為の風潮が「無関心社会」を生み出していると思う.
西欧における道徳感はキリスト教義に根ざしており,人間愛の精神である.イエス・キリストは,「人の欲する事をやりなさい」と行為こそが愛であると説いており,東洋の道徳感とは正反対の説き方である.心肺蘇生法は人間愛に基づいた行為であるからこそ,突然,目の前で人が倒れた時,「大丈夫ですか」と声をかける事が選択枝のない絶対的行為なのである.目の前の命を救うのは人間の当然の行為という前提に立っているからである.
 心肺蘇生法の普及活動は,「他人の命を守る事が,自分の命が守られている」社会通念を誰にでも容易に理解できる啓発運動である.いくら心肺蘇生法を体得しても自分の命を守る事はできない.すぐ隣の人が心肺蘇生法をしてくれてこそ自分の命が救われるのである.すぐ隣の人は,家族であり,時には友人,隣人,職場の同僚,通りがかりの人かもしれない.心肺蘇生法は,一人一人が「お互いの命を守る>ための社会づくり」に参加する意志表示である.
 人は社会の中で生きてゆく為には,命と財産を守ってくれる社会国家の存在を忘れてはいけない.戦後,日本が受け入れた民主主義体制は,個人の基本的人権を保証し,世界でもっとも安全な国家を誕生させた.しかしながら,戦後50年,日本人は与えられた民主主義による安全と自由を享受していても,自らの基盤に立つ真の民主主義が育っているのだろうか.
 基本的人権の中の「言論の自由」とは,他人の意見を尊重する事が自分の意見が認められる事である.「宗教の自由」とは,他人の宗教を認める事が自分の宗教が認められる事である.別の言い方をすれば,基本的人権は,われわれに与えられた「権利」であるが,われわれはお互いの権利を守る「義務」も課せられている事を知らなければいけない.
5年前のオウム事件で問題となった新興宗教側の「宗教の自由」とは,一方的な権利主張であり,自分たちの教義を広めるためには,他の宗教を認めるどこらか守っている社会までも攻撃対象とした宗教集団であった.この事件の恐ろしさは,被害者の1人である河野氏を警察,マスコミは犯人像に仕立て上げ,一時的にせよ世間に信じさせた事である.その後の河野氏の抗議活動を通して「人権を守る社会」の未熟性を改めて痛感した.昨年の神戸友が丘小学生殺人事件においても,「報道の自由」のもとに展開された事件報道は,被害者の人権,加害者の人権の扱いの不平等性が見られ,必要以上の被害者のプライバシーの書き立てに反し,加害者の徹底的な人権保護の姿勢が見られた.阪神・淡路大震災後の心のケアが問題となっており,凶悪犯罪の被害者およびその家族に対しても心のケアが求められている.
「関係ないと思うことに差別の芽」の標語のごとく,まさに現在の日本人の無関>心が社会の成熟化を妨げているのである.無関心と「ジコチュウ」が支配した21世紀の日本にならないように,今や社会の中核の団塊の世代の責任は重い.
 心肺蘇生法は,子供達に命を救う方法を教えることにより,命を感性に訴える「命の教育」である.「命の教育」をいかにすべきかが教育現場での大きな課題になっている現在,心肺蘇生法の実技講習は是非行う必要のある教育の一つであると考える.

 続く

 バックナンバーにつきましてはセンターホームページ資料ボックス
http://www.hyogohsc.or.jp/box/frame.htm
からご覧いただけます。

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▼【健康づくりワンポイントアドバイス】

・ 脊椎ストレッチウォーキングのご紹介
 腰と脚が連動し、上体の姿勢が伸びたスムーズで大きくリズミカルな歩行は美しく、ちょっとした芸術的な動きになります。兵庫県立健康センターでは、効率のいい脊椎の伸びた歩行方法を「脊椎ストレッチウォーキング」と名づけ、健康づくりの指導に役立てています。
 運動不足で肥満や体調不良になり、あわててウォーキング。歩くことならできると過信し長時間行なってしまう。けれども、悪いフォームで歩くと結局身体を痛めて失敗することになります。
 当センターでは、歩くということを健康づくりと姿勢の矯正という二つの目的に使い分けて指導していますので、それをご紹介しましょう。
 有酸素運動を目的とするウォーキングの方法は、効率のいい足の運びでテンポ良>く進むことです。
 次のように足を運んでみてください。
(1)膝を伸ばして、かかとから着地する。
(2)着地したと同時に、かかとの上におへそを乗せていく。
(3)着地した足の裏が全部、後ろに見えるように蹴る。
このように足を運べば正しくかかとから親指の付根の方に力が移動しますし、足の移動が車のタイヤのように効率の良い動きになります。
姿勢を矯正するには、脊椎を前後左右から真っ直ぐに保持した状態でウォーキングし、脊柱起立筋をバランスよく鍛えるというのが基本的な方法です。以下がその状態を作る方法です。
(1)頭の頂点から糸が操り人形のように天井に繋がり、その糸を釣り上げる感じで踵を上げずに身体を伸ばし、あごを引く。
(2)身体を釣り上げた状態で、お腹を斜め後方に引き上げた状態をつくる。
 この姿勢で歩きます。踵から着地し、腕は力を抜いて自然に振ってください。最初はかなり疲れますので、5分程度から始めてください。慣れれば長時間の歩行が可能になります。
 姿勢のいい、バランスのとれた美しい歩行は、必ず健康づくりに役立ちます。さあ、あなたも一日に一回、脊椎ストレッチウォーキングを始めましょう。

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▼【センターの話題】

・ ヘルシー料理講習会のご案内
 下記のとおり減塩をテーマにヘルシー料理講習会を開催します。
 期日:3月9日(木)
 時間:10時00分〜12時00分
 内容:減塩食についての講話と調理実習
 料金:一般2,000円 メンバー1,000円

・ 塩分測定
 ・あなたの家庭の味噌汁をお持ちいただけば、塩分濃度の測定及び減塩食の工夫のご指導をさせていただいております。
 期日:毎週木曜日
 時間:14時00分〜14時30分
 料金:一般300円 メンバー150円

・ 平成12年度健康教室生募集開始
 2月1日より平成12年度健康教室生の募集行っています。
 詳しくはホームページ
http://www.hyogohsc.or.jp/ のTOP1

申込及び問合わせは健康センターまで

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▼【兵庫県内の話題】

・ ジャパンフローラ2000開幕
 3月18日。いよいよ、淡路島から新しい世紀に向かって「新しい花と緑の文化」を世界に発信する一大ページェント、「ジャパンフローラ2000」が開幕します。
http://www.jf2000.or.jp/

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▼【兵庫県外の話題】

・ 新潟の監禁事件に触れて
 新潟県の小学校4年生の9年間の監禁事件に触れ、現在19歳の女性がこの不幸を乗>り越えて,社会復帰されんことを願っている。「人は生れ落ちた時は(人間と言う)ただの動物に過ぎない。それを人にするのは愛情である」とは、讀賣新聞の編集手記に書かれていた言葉であるが、ここに書かれている事も、人間が心を持った時に始めて「人になる」。人間の心は、他人とのかかわりにて、自分の存在を感じ、自己形成が生まれてくる。過去にも、人間が野生に育った野生人間の社会復帰の物語があるが、心の発生過程において、身近な人間(親)の愛情がなければ、人としての心は生まれてこない。小学校4年生まで親の愛情を一身に受けていたこと、自分の名前を忘れないように自己を心の中にしまい込んでいたことが最大の救いに感じます。

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▼【お願い】

 このメールマガジンは、健康づくりをテーマに兵庫県立健康センターが編集し、不定期(月1回程度)に発行します。本号は個人407件、団体51件の合計458件の方々にご送付させていただきました。
 誠にお手数ですが貴メールアドレスへのメールマガジンの送付停止につきましては、下記の当センターホームページより削除依頼いただきますようお願い申し上げます。

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 ご意見、ご要望、記事等のご投稿につきましては、メール等でご送付いただければ幸せです。また、健康づくりに関するディスカッション、質問解決の場としてはメーリングリストを開設いたしております。併せてご利用下さい。

メール mail@hyogohsc.or.jp(hyogohsc@hyogohsc.or.jpにはリメールできません)
メーリングリスト http://www.hyogohsc.or.jp/maillist/frame.htm からhealth_for_all@hyogohsc.or.jp へ入会の上ご利用下さい。

 我々は多くの方々の健康づくりに少しでも寄与できればと考えております。インターネットにつきまして、未熟な我々がこうしてメールマガジンを発行できるのも、皆様方のご協力の賜物と感謝いたしております。今後ともご協力、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
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 兵庫県立健康センター
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