心臓震盪はAEDで救命できる

 


 心臓震盪はAEDで救命できる

  平成16年7月20日の東京新聞に少年野球中の心臓震盪(commotio cordis)についての記事の掲載されました。
  会社員岩田賢雄さん(47)は4年前、長男の紘來(ひろき)君=当時(13)=を亡くしました。紘來君は硬式野球チームでノックの球を胸に受けて倒れ、死亡したものです。ノックのボールを受け損ねて胸部を強打したことが心臓震盪の原因です。その本体は、心臓に打撃による瞬間的打撃により心室細動が起こったためです。
  心室細動の発症メカニズムは、通常、心電図波形P-QRS-TのT波に心室性期外収縮が重なった時に心室頻拍次いで心室細動が起こります。医学的には、“R on T”と呼ばれています。
  この現象は、心筋の興奮異常による心室性期外収縮ではなく、外部からの機械的刺激によっても起こる可能性があります。しかし、ボールにより胸を強打した全ての場合に起こるのではなく、“R on T”のタイミングに合致して機械的刺激が加わった場合です。特に、子供の場合には、心臓を守っている胸骨、肋骨が柔らかく、外力がまともに心臓に加わるためです。
  米国で2001年9月までに集められた心臓震盪の128例のデータを見ますと、野球のボール以外にもホッケーパック、ラクロスボールでも起こっています。空手などに徒手、スポーツ時の接触、子供のけんか、家庭内のしつけなど同様の外力が加われば心臓震盪は起こります。
  「心臓震盪から子供を守る会」が発足したことを新聞で知りましたが、少年野球の指導者は「ボールは身体で受けよ」と言っていることが多いと思います。
  今後、野球などの球技、接触スポーツの指導者は、心臓震盪の病態を理解し、緊急時には「AEDを使用した心肺蘇生法」の習得が求められます。
  学校管理下の心臓突然死から子供を守るためにAED設置は優先課題で、心臓震盪はどの生徒にも起こることでことを認識しなければなりません。


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